ダイバーシティを語るうさぎ「性暴力サバイバー」

性暴力の被害当事者です 。PTSDの事、自分の体験談、日々の楽しみなど色々な事を綴ります。女子大生です。

政府の性暴力対策強化方針と持論

今年の夏で、私が性被害に遭ってから5年が経ちます。今までの治療や辛かった時間を思うと長く感じますが、被害届を出せるタイムリミットまであと半分!というところに来てしまったと考えると時の流れが早くて驚きます。

今は少し自分の経験を話せるようになって、自分のように苦しむ人を減らしたい一心でブログや活動を始め、たくさんの理解ある方々に巡り会い、前向きに生きています。

しかし、他で経験した人生の挫折のように、「これをバネに頑張れるから無駄な経験ではなかった」とはなりません。無かった方が100%幸せな人生だったと思います。

だから、性被害について考える時はとても感情的になってしまうし、加害者やセカンドレイプに当たる言葉で私を精神的に追い詰めた相手が本当に許せないです。

被害を経験した当事者として本当に性犯罪を減らしたいと思っているし、今いる全ての被害者が少しでも楽に生きられる世の中になってほしいと心の底から願っています。それ故に、感情的になりすぎて飛躍した論理を展開してしまう事もしばしばありました。

 

しかし、被害からある程度時間が経って少しずつ勉強をした今、感情論だけでは何も変えられない事が分かってきました。

いつだって人が話を聞きたいのは、感情的に騒ぐ人ではなくて、冷静かつ論理的に、根拠や考えを話せる人の話だと頭では分かっているのですが、、自分の被害の話となるとつい熱くなり過ぎてしまいます(o_o)

 

とても前置きが長くなってしまいました。。

今日は何が話したかったのかというと、先日発表された「性犯罪・性暴力の対策強化に向けた政府の方針」についてです。

 

加害者に対するGPSの装着

これについて今一番議論が盛り上がっているのは加害者に対するGPSの装着についてですね。

加害者の人権についても話されているし、「そもそも効果があるのか」という事もよく話されています。

 

加害者に対するGPS装着については、

GPSをつけるだけで再犯率ダウンが望めるとは全く思わないけど、加害者にある一定の治療をした上でならある程度の効果を発揮するのかな?」

というのが私なりの感想です。

 

再犯防止と加害者の治療

性犯罪の再犯率を下げるのに一番大切なのは「加害者に対する精神的な治療」だ!というのが私が今まで一貫して持ってきた持論です。

それは、痴漢や強姦などの性的問題行為がときに「性依存症」など治療が必要な原因によって引き起こされるケースがあると認識しているからです。この場合、刑罰やGPSなどの方法のみで再犯を防ぐのは限界があると考えています。

そのような時には認知行動療法などを用いた精神的な治療が必須でしょう。

”治療“というと加害者のためだけに施す手当てのように聞こえますが、実際はそうではなく、再犯のファクターとなるものを取り除き、社会の安全に寄り添って、同じような悲しい事件を繰り返す確率を下げるために必要な極めて合理的で現実的な対策だと思っています。

 

また、GPSを装着する事で位置の確認はできますが、誰かの体を触ったり、誰かをある一定時間暴行してもその行動までは把握できないはずです。本人に更生する完璧な意思と、理性で行動をコントロールする能力があるならば、GPSがある程度の抑止効果を発揮すると思いますが、そうでない場合にはまずは精神的な治療が第一なのかなと思います。

今回の対策強化案には「認知行動療法を活かした専門的プログラムの拡充」という記述もあったので、バランスよく時間をかけて行えばある一定の効果はあるのかな?と素人ながらに少し期待しています。

GPS装着や厳罰化に反対しているわけではないし、治療かGPSか厳罰化かどれか1つ!と言っているわけでもありません。

とにかく加害者の治療は重要だよな〜という気持ちです。

GPS装着のように人の権利を著しく制限、侵害する行為は必ず法律を根拠に行わなければならない決まりですから、まずは今慎重にたくさん議論されていることに私は価値を感じているし、性暴力の対策強化について世論が盛り上がっている事は被害当事者のひとりとして単純に嬉しいです。

加害者の治療と私のオススメ図書

先日「痴漢外来」という本を読みました。この本の著者である筑波大学の原田隆之先生と以前少しお話したことがあります。この本の中でも書かれていますが、私がお会いした際にも「加害者に対する精神的な治療は科学的なエビデンスを踏まえた上で再犯防止にはとても重要だ」という事をおっしゃっていました。

先生がテレビの番組で同様の事をお話しになった際「加害者の味方をするのか」「なんでも病気(性依存症)にするな」といった批判が多く寄せられたそうです。

なるほど、ひと昔前まだ私が加害者に対する怒りで感情的な言葉しか出なかった頃を思い出すと、そのような批判をしたくなる気持ちもよく分かる...。

でも、本気で性犯罪を減らしたいと考えて動き出した今の私はそれだけじゃやっていけない事が分かります。

深く話しすぎると本のネタバレになってしまうので、今回は私のおすすめ図書として最後に「痴漢外来」のURLを貼って紹介しておくにとどめます..笑

科学的な側面から性犯罪について書かれているのでとても興味深い内容がたくさんです。

 

被害を経験して辛い気持ちを知っているからこそ、私は冷静になって性犯罪を減らすための現実的な方法を模索していきたいと思いました。

 

 

性暴力対策強化に関する政府の方針はこちら

 

原田隆之先生「痴漢外来」はこちら

 

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